シンガポールに来て、まず驚いたのが「エスカレーターの速さ」・・・という方は少なくないのではないでしょうか。
今ではだいぶ慣れてしまいましたが、日本にいたときに使っていた駅ビルのエスカレータが「低速運転」だったこともあって、シンガポールに来てすぐのころはMRTのエスカレーターの乗り降りに一瞬戸惑うほど驚きました。
今4歳の息子には問題ないけど、3歳半の頃だったら、手をつないでいても転倒の危険があったのでは??お年寄りは大丈夫なのかしら??
・・・体感的にはそのくらい早いけど、果たして日本と比べてどのくらい速いの??気になったのでデータを調べてみました。
日本のエスカレーターの標準速度は?
まず日本では、転倒防止の観点から、建築基準法でエスカレーターの勾配(角度)に応じた上限速度が定められています。
勾配 | 速度 |
---|---|
0度超8度以下 | 50m/分以下 |
8度超30度以下 | 40m/分以下 |
30度超35度以下 | 30m/分以下 |
日本エレベーター協会によると、日本のエスカレーターの標準的な勾配・速度は、
「角度30度で分速30m(秒速0.5m)」・・・と言われてもピンと来ないと思いますが、、
東京都営地下鉄各駅のエスカレーターは、この分速30m(秒速0.5m)が基本であり、ラッシュ時に輸送力を上げる必要がある駅では分速40m(秒速0.66m)というところもあるそう。
一方で、都営三田線の巣鴨駅は、最寄りの商店街を訪れるお年寄りへの配慮として分速20m(秒速0.33m)となっているそうです。とても日本的ですね。
シンガポールのエスカレーターの速度は?
で、肝心のシンガポールMRTのエスカレーターは・・・というと、調べたところ分速45m(秒速0.75m)。
日本の地下鉄の1.5倍の速度。巣鴨と比べたら2.25倍。どおりで乗り降りに一瞬戸惑うときがあるはずです。
ただ、シンガポールでも高齢化が進行する中で、南北線と東西線については2016年から一部速度を落とし、ピーク時は0.75mですがオフピーク時は0.5mにするなど速度を変えて運行されているそう。
確かに、今となってはたまに「あれ?今日遅くない?」って感じることあるかも。
シンガポールの高齢者は、エスカレーターではなくエレベーターの利用が推奨されていることもあり、子どもや高齢者への配慮を理由にこの速いエスカレーターやめようとまではならないんですね。
何を重視して、何を適正とするかはその国の考え方次第。
こういう小さな違いが面白いなと思います。
これも「キアス」から?
「キアス」=負けず嫌い
シンガポール人の国民性を表わす言葉の1つが「キアス(KIASU)」。
福建語を由来とするシングリッシュで、「負けるのが怖い」「負けたり損をしたりすることが嫌い」「相手に劣っていたくない」ことを表わす言葉です。
Kiasu comes from the vernacular Chinese phrase Chinese: 怕輸, meaning 'fear of losing’. From Wikipedia
もともと競争心が強いと言われる中華系人口が75%を占め、さらに国土が狭くて人口密度が高く、学歴を含め競争が激しい小国シンガポール。そのシンガポールがさまざまな困難を克服し、現在の地位を築く上で培ってきた気質ですから、それも必然かなと思います。
合理的で無駄を嫌う
そして、「キアス」の特徴の1つが、無駄なことに時間やお金を使って出遅れることを嫌うこと。せっかちで、効率・合理性を重視し、何事もスピーディーに進めることを好みます。エスカレーターの速さは、まさにこう言った国民性の影響。
些事にこだわり、丁寧すぎて何事も時間をかけてしまう日本人とは真逆ですね。
ビジネスシーンではもちろんのこと、日常においてもそれを感じることが多々あります。
例えば、レストランで食べていても閉店時間近くになると空いている席でストアマネジャーが今日の売り上げ計算を始め、手のあいたスタッフから堂々とまかないご飯を食べ始める。
効率よりも、安全・信頼・高品質を重視する日本人の感覚では驚くこともありますが、異なる文化・慣習を学び、価値観が揺さぶられる経験ができるのが海外に出るいいところ。
乗り降りの緊張感を味わいながら、この速いエスカレーターの背景に思いを馳せています。